トレランの開催地が国立公園内に限り制限される

朝日新聞経由のYahoo!ニュースに配信されたニュースによると、環境省では国立公園内でのトレールランニング(以下トレラン)の開催に厳しい制限を設け、事実上の国立公園内でのトレランの開催が難しくなると言うことです。
ただし、この記事、漠然としすぎているので、探してみました。

環境省が国立公園におけるトレイルランニング大会の指針を発表 | grannote グランノートと言う、かなりのボリュームのある記事を見つけました。
朝日新聞などより詳細です。

以下、やや長いですが、環境省自然環境局国立公園課の岡本光之氏の発言なので引用します。引用元は上記のURLです。
正式な環境省からの発表は2015/3に行われる予定です。

「近年トレイルランニングが盛んになり、大会に関する相談も多くなってきた。一方で、自然環境に与える影響への懸念や、他の登山道の利用者の安全や快適さを妨げてはいないかという声もあがっている。そこで今回、基本的な方針を整理した。

豊かな自然を後世に引き継ぐことは、わたしたち世代の責務。数百年から数千年かけて数十センチしか形成されない山岳土壌は、通常の登山活動においても影響を受けることがあり、登山道に浸食や拡幅が起こってしまう場所もある。取り返しのつかない影響は絶対に避けなければいけない一方で、美しい空気の中で自然を感じながら走ることの素晴らしさは多くの人々に支持されており、それがトレイルランニングの人気につながっている。

トレイルランニングと一般登山やハイキング、自然環境の保全は必ず折り合い点があると考えている。これまで山岳関係者やトレイルランニング関係者、登山道管理の専門家、各行政機関の方々から意見を聞いてきた。今日ははより多くの方々から意見をうかがい、今後の参考にしたい」。

トレランと登山

わたしが見たトレランの実態

私自身はトレランも登山もするので、双方の視線を持っています。
トレラン走者には入口が二つあって、ランニング愛好家が平坦地、舗装道路を走ることから自然の中を走ることに変化するケースと、登山家が歩くことから走ることに変化するケースがあります。

ここ数年間にトレランが盛り上がりを見せていますが、その証拠にわたしが登った山でトレラン走者と出会わなかった山の方が珍しいです。
2011年-2013年の3年間に、わたしは奥羽山脈、北関東山地、秩父山脈、八ヶ岳山脈、谷川連峰、日本アルプス、白山などを歩きましたが、トレラン走者を見なかったのは日光連山、尾瀬と周辺の山、白山だけです。
北海道や西日本の山々はここ数年間には歩いていませんので分かりません。

谷川連峰のトマノ耳から茂倉岳の間の岩場や、八ヶ岳連峰の横岳の岩場など、トレランには向いていないと思うのですが、練習のためと思いますが走っています。

面白いところでは、NHKで放映された(らしい)日本縦断山岳耐久レースの大会開催中に、ほぼ同じルートを同じ日程で歩いた経験です。
南アルプスの三峰岳のピークで4人組のテレビクルーを見かけたので夕焼けを撮影するのかと思っていたら、そうでは無く山岳レースの撮影の為でした。
このレースは北アルプスの剣岳から始まり、南アルプスを縦走して太平洋の海際までを走るレースです。
8/12(日)~18(土)トランスジャパンアルプスレース2012

トレランの愛好家は約20万人と推定されているそうですが、登山者に比べればごく少数です。
ただ、大会など特定の山や登山道に、特定の日時に集結してしまう傾向があります。

首都圏では、高尾山-陣馬山間が多くのトレラン走者が走っています。
山岳耐久レースの開催地である三頭山と周辺の山々も週末は多くのトレラン走者が走っています。

数の増加は質の低下を招く、との言葉の通り、八王子市に住んでいた3年間で上記の2カ所の登山道をはしるトレラン走者の数が激増し、それまでは殆どのランナーは、道を譲ってくれたハイカーや登山者に対しては会釈をしたり礼を述べたりしていたが、2013年のゴールデンウィークの時にわたしが高尾山から陣馬山までを歩いたときには、道をよけてくれたハイカーや登山者に会釈をするランナーは多く見積もっても半分ほど、怒鳴るランナーこそいませんでしたが、ハイカーのペースにいらついているのが見ていて分かるほどでした。
近い将来に喧嘩・暴力沙汰ないしは衝突・接触等の事故が起こるのではと心配していました。

高尾山や陣馬山は登山者はほとんどなくハイカーが大半を占めていますから、歩くペースも登山者よりはゆったりとしています。登山者のわたしは高尾山から陣馬山まで3時間足らずで歩きますが、大抵のハイキングガイドには所与時間が4時間から5時間と書かれています。
ロードタイプの自転車と歩行者が狭い同じ道を利用していると想像すれば、トレランナーとハイカー・登山者の速度の違いは分かりやすいでしょうか。

三頭山の周辺の登山道は山岳耐久レースの大会の開催地なので、大会会場で練習をするためのトレランナーが週末には多数訪れてきます。
ある年の春、武蔵五日市駅から三頭山まで奥多摩三山を歩いたとき、大岳山と御前山の大ダワ峠から御前山の間の2時間は掛からない行程の登山道で、100名を超える下ってくるトレランナーとすれ違ったことが有り、すれ違うためにずいぶんとまたされたことがあります。
奥多摩三山を走るトレランナーは大会出場を目的としているからほぼ全員が登山道からよけて木の下や笹藪の中で立って待っているわたしに会釈をしてくれましたが、あれは迷惑でした。

トレランの規制の内容

規制される理由ですが、大会などを開催すると、特定の場所と日時に多くのトレランナーが集中してしまい、登山道や自然に大きな負担をかけてしまうことを懸念しているため、だそうです。

登山道は当たり前ですが歩くために設けられているので、走る人向けには作られていません。また、数十名、数百名のトレランナーが集中するということも考えられていません。
これは当然でしょう。だから規制せざるを得ないようです。

わたしはトレランの大会に出場したことが無いので様子を実感として知らないのですが、登山をしているときに見かけるトレランナーの集団を見ているだけでも、登山よりは自然や登山道への負担が大きいことが分かります。

資料を読んだ限りではトレランそのものを規制するのでは無く、人が集中するトレラン大会を規制する趣旨のようです。
対象は国立公園内の大会に限られる様です。

所感

トレランも登山も楽しいです。
ただ、スキーとスノボの共存がなかなか難しい様に、トレランと登山道の共存も難しいでしょう。
岡本課長は「トレイルランニングと一般登山やハイキング、自然環境の保全は必ず折り合い点があると考えている」と述べていますが、双方がいま享受しているものを手放さなければ妥協は無理なので、相当な険しい道のりとなりそうです。

わたしの個人的な印象では、登山者がトレランナーから被る迷惑を我慢している、と言うのが現状です。
トレランナーが登山者に道を譲って貰うというのはよく見ますが、トレランナーが脇によけて立ち走りをしながら登山者が通り抜けるのを待つと言うシーンは見たことがありません。
速度が速いほうが優先される、と言う道交法が登山とトレランにも自然に成り立っているようです。

今回の環境省の指針の発表は、国立公園内でのトレールランニングに限定されます。
裏を返せば、国立公園内にルートを設けなければ従来通りのトレラン大会が開催可能というわけです。
中部山岳国立公園、秩父多摩甲斐国立公園など、トレールランニングに人気の高い縦走路では大会が開かれなくなるのですが、それらに負けない美しい景観と走る楽しさを持った登山道は国立公園以外にもあるので、そうした山と登山道にトレラン大会が集中してしまい、自然と道が荒れに荒れてしまうと言う可能性が出てきました。
例えば北海道の天塩岳などは道立公園)